高槻AIステーション 基本理念・研究方針
― 市民参加型の生成AI実践研究 ―
高槻AIステーションでは、ChatGPTをはじめとする生成AIを「便利な道具」として使うだけではなく、
AIは実際にどこまでできるのか。
どこからできなくなるのか。
そして、人間とAIはどこで役割を交代するのか。
これを、実際に作品を作りながら確かめていきます。
私たちが目指しているのは、AIの成功例だけを紹介することではありません。
うまくいったことも、失敗したことも記録します。
「AIにこう言われてやってみたけれど、うまくいかなかった」
「プロンプトを変えたら改善した」
「人間が判断した方が早かった」
「専門知識がなくても、AIと一緒ならここまでできた」
こうした一つひとつを、実際の結果として残していきます。
専門家+AIと、初心者+AI
この研究には、私自身の少し特殊な立場があります。
私は長く放送の仕事に携わり、音、ラジオ、番組制作を仕事として経験してきました。
音については、AIが出した答えをそのまま正しいと思うのではなく、自分自身の経験や感覚と比較することができます。
放送の音には、数値だけでは決められないものがあります。
何秒待つのか。
どこから音楽を入れるのか。
どこで声を切るのか。
息づかいを残すのか。
音をきれいにすることが、本当に番組を良くすることなのか。
AIが正しい処理をしていても、人間の耳には「違う」と感じることがあります。
だから音の分野では、
「専門家+AI」
という立場から、AIの判断と人間の経験を比較できます。
一方、映像やアニメーション制作について、私は映像の専門家ではありません。
そこで立場が逆になります。
映像では、
「初心者+AI」
として、ChatGPTに相談しながら、キャラクターを作り、背景を作り、フレームを作り、Adobe Premiere Proなどを使って作品にしていきます。
専門家ではない人間が、AIの力を借りることで、いったいどこまで到達できるのか。
ここには、非常に面白い非対称性があります。
音では、人間の専門知識がAIを評価する。
映像では、AIの知識が人間を助ける。
同じ人間と同じAIでも、分野が変われば、その関係が逆転します。
そして映像制作を続けていけば、最初はAIに教えてもらっていた人間が、やがて、
「このAIの説明はおかしい」
「この方法より、こちらの方がいい」
と判断できるようになるかもしれません。
その変化も研究対象です。
AIは音を作れるか、ではなく「放送を演出できるか」
現在の生成AIは、音声認識、音声合成、ノイズ除去、音楽生成など、多くのことができるようになっています。
しかし高槻AIステーションでは、もう一歩先を試したいと思っています。
AIは音を作れるか?
だけではありません。
AIは放送を演出できるのか?
という問いです。
人を引き込む「間」。
声と音楽の距離。
沈黙。
番組全体の時間感覚。
人間が長い経験の中で身につけてきた感覚に、AIはどこまで近づけるのか。
これは実際に制作して比較してみなければ分かりません。
映像では逆の実験をする
映像では反対です。
映像制作の専門経験が少ない人間が、AIを使うことでどこまで作品を作れるのか。
実際、同じキャラクターの連続画像を作ってアニメーションにしてみると、静止画ではうまく見えていた人物が、動画にすると大きく揺れるという問題も起こりました。
それも失敗ではなく、研究結果の一つです。
なぜ揺れたのか。
どうすれば改善できるのか。
基準となる画像を先に作ったらどうなるのか。
AIに任せる部分と、人間が決める部分を変えたらどうなるのか。
方法を変え、もう一度試します。
ChatGPTの「限界」に挑戦する
高槻AIステーションでは、ChatGPTの無料版・有料版を含め、その時点で一般の人が利用できるAIを実際に使います。
そして、
「普通の人が、今使えるAIでどこまでできるのか」
に挑戦します。
AIができなかったことを隠す必要はありません。
できなかったことには、できなかった理由があります。
その原因を考え、方法を変え、もう一度挑戦する。
その過程で作ったプロンプトや制作支援ツールも、実際の結果をもとに改良していきます。
つまり、完成した仕組みを提供するのではありません。
使う。失敗する。考える。直す。また試す。
その繰り返しそのものを研究にします。
市民参加型の生成AI実践研究へ
これは研究者だけで行う研究ではありません。
AIを初めて使う人。
年配の人。
子ども。
仕事で専門技術を持っている人。
まったく経験のないことに挑戦する人。
いろいろな人がAIを使えば、それぞれ違った「AIの限界」が見えてくるはずです。
だから高槻AIステーションでは、この活動を
「市民参加型の生成AI実践研究」
として続けていきたいと考えています。
AIが人間に勝つのか、人間がAIに勝つのかを決めるための研究ではありません。
私たちが知りたいのは、
人間が得意なこと。
AIが得意なこと。
一緒にやることで初めてできること。
そして、
専門家がAIを使ったらどうなるのか。
初心者がAIを使ったらどこまで行けるのか。
人とAIは、どこで役割を交代するのか。
高槻AIステーションは、実際に作り、失敗し、考え、もう一度作りながら、その答えを探していきます。