ポコちゃんと森
ポコちゃんは、少しだけいじわるでした。
ひなちゃんが話しかけても、
ポコちゃんはあまり聞いてくれませんでした。
「ポコちゃん、聞いてよ。」
ひなちゃんは何度も言いました。
でもポコちゃんは、テレビばかり見ていました。
ある日、ポコちゃんはテレビに出ました。
それから――
ポコちゃんはいなくなりました。
「ポコちゃん、どこ行ったの?」
ひなちゃんは探しました。
町を探しました。
公園も探しました。
でも、どこにもいません。
すると、おじいさんが言いました。
「ポコちゃんは森に行ったらしい。」
「森?」
ひなちゃんはびっくりしました。
その森は、
町のはずれにある、
だれも入ったことのない森でした。
風がふくと、木がささやきます。
「ポコちゃん……ポコちゃん……」
ひなちゃんは決めました。
「よし、森に行こう。」ポコちゃんを探す旅が、
いま、始まりました。
ー・ー・ー・
ポコちゃんは動物かもしれません。
人間かもしれない。
犬かもしれません、白いモコモコの犬のようです。
ポコちゃんの家はどこなんですか?ポコちゃんは森で1人では生活できません。
ぽこちゃんは1人で泣いていました。1人で生活できないから。仲間がいませんでした。
どうしたらいいの?
ひなちゃんは、森の入り口まで来ました。
森の中は、昼なのに少し暗くて、風が木をゆらしていました。
ざわ……ざわ……。
「ポコちゃん……いるの?」
ひなちゃんが小さな声で呼ぶと、
遠くのほうで、かすかな泣き声が聞こえました。
「……くすん……くすん……」
「いまの声!」
ひなちゃんは、落ち葉をふみしめながら進みました。
すると、大きな木の根もとで、白いモコモコのかたまりがふるえていました。
「ポコちゃん!」
それはポコちゃんでした。
いつもは知らんぷりして、テレビばかり見ていたポコちゃんが、
小さく丸くなって泣いていたのです。
「ポコちゃん、どうしたの?」
ポコちゃんは、うつむいたまま言いました。
「……ぼく、町ではへいきだった。
でも、森ではひとりで生きられない。
どこへ行けばいいかわからない。
だれもいないし、こわいんだ。」
ひなちゃんは、びっくりしました。
あのポコちゃんが、こんなふうに弱い声を出すなんて、思ってもみなかったのです。
「じゃあ、いっしょに帰ろう。」
するとポコちゃんは、首をふりました。
「帰れないんだ……。
ぼくは、この森で見つけなきゃいけないものがあるんだ。」
「見つけなきゃいけないもの?」
ポコちゃんは、こくりとうなずきました。
「ぼくの仲間だよ。」
ー・ー・ー
ひなちゃんとポコちゃんは、森の奥へ進みました。
すると、大きな木がありました。
とても古くて、空までとどきそうな木です。
そのとき――
ゴゴゴ……。
木が、少し動きました。
「えっ?」
ひなちゃんはびっくりしました。
「……だれか、いるの?」
すると、声が聞こえました。
「ここだよ」
声は、木から聞こえてきました。
「き、木がしゃべった!」
ポコちゃんはびっくりして、ひなちゃんの後ろにかくれました。
木は言いました。
「わたしは、この森の木だよ。
でも、だれとでも話すわけじゃない」
「どうしたら、話してくれるの?」
ひなちゃんが聞きました。
木は、少しだけ葉っぱをゆらしました。
「ほんとうのことを言える子だけだよ」
ポコちゃんは、うつむきました。
「ぼく……」
少し考えてから、小さな声で言いました。
「ぼく、ほんとは、さみしかった」
そのとき――
サワサワサワ……
木の葉が、やさしくゆれました。
「……いいよ。少しだけ、話してあげる」
そのとき――
ピィ……ピィ……。
どこからか、小さな泣き声が聞こえました。
「だれか、泣いてる……」
ひなちゃんが言いました。
ポコちゃんは、そっと前に出ました。
木のうしろのほうに、小さな黄色い影が見えました。
近づくと――
それは、黄色いからだに、ピンク色の足をした
小さな小鳥でした。
羽をふるわせながら、泣いています。
「どうしたの?」
ポコちゃんは、ゆっくり声をかけました。
小鳥はびくっとして、顔をあげました。
「……こわくない?」
ポコちゃんは、やさしく言いました。
「だいじょうぶ。ぼくも、ちょっと前まで泣いてたんだ」
小鳥は、すこしだけ安心したように見えました。
「わたし……ムーチっていうの」
「ムーチ?」
ひなちゃんが言いました。
「うん……森で、まいごになっちゃって……
おうちに帰れないの……」
ムーチは、また涙をこぼしました。
ポコちゃんは、少しだけ考えました。
そして――
「いっしょに探そう」
そう言いました。
ひなちゃんは、びっくりしました。
あのポコちゃんが、
だれかを助けようとしている。
ポコちゃんは、ムーチの目を見て言いました。
「ぼくも、仲間を探してるんだ」
ムーチは、ぽかんとしました。
「なかま……?」
「うん。だから、いっしょだよ」
ムーチの目が、すこし明るくなりました。
そのとき――
大きな木の葉が、ゆっくりとゆれました。
サワ……サワ……。
「いいね」
木の声が、やさしくひびきました。
「だれかのために動ける子は、
もうひとりじゃない」
ポコちゃんは、少しだけ笑いました。
はじめてでした。
森で、こわくないと思えたのは。
サワ……サワ……。
木の葉が、やさしくゆれていました。
ポコちゃんとひなちゃん、そしてムーチは、
森の奥へ、さらに進んでいきました。
すると――
ヒュウウ……
風が、少し強くなりました。
そのときです。
「……にゃあ」
空の上から、声が聞こえました。
「え?」
ひなちゃんが見上げると――
ふわり。
空から、ゆっくりと何かが降りてきました。
それは――
白とグレーの毛をした、小さな猫でした。
でも、その猫には――
羽がありました。
「ね、ねこが……飛んでる!」
ムーチがびっくりして言いました。
猫は、静かに地面におりました。
そして、ポコちゃんたちを見て言いました。
「……あなたたち、この森の子?」
ポコちゃんは、少しだけ前に出ました。
「ちがうよ。でも、仲間を探してるんだ」
猫は、少しだけ目を細めました。
「仲間……」
その言葉に、少し反応したようでした。
「ぼくはポコちゃん。こっちはひなちゃんとムーチ」
「……私は、ソラ」
猫はそう言いました。
「ソラ?」
ひなちゃんが聞き返しました。
「そう。空を飛べるけど――
帰る場所がない猫」
しばらく、しずかな時間が流れました。
ポコちゃんは、ゆっくり言いました。
「ぼくもね、
帰る場所がわからなくなったことがあるよ」
ソラは、少し驚いた顔をしました。
「……そうなの?」
ポコちゃんは、うなずきました。
「でもね、
ひとりじゃなかったら、ちょっとこわくなくなる」
ムーチも、小さくうなずきました。
「うん……」
ソラは、空を見上げました。
風が、やさしく吹いています。
「……ねえ」
ソラは、少しだけ勇気を出して言いました。
「いっしょにいても、いい?」
ポコちゃんは、すぐに答えました。
「いいよ」
その一言は、とてもあたたかくて――
森の空気が、少し変わりました。
サワ……サワ……
大きな木の葉が、またゆれました。
「……そろってきたね」
木の声が、静かにひびきました。
「え?」
ひなちゃんが見上げます。
「ポコちゃんが探している“仲間”はね――」
少しだけ間があって、木は言いました。
はいポコちゃんは何しましたか「もう、ここにいるよ」
ポコちゃんは、まわりを見ました。
ひなちゃん
ムーチ
ソラ
みんなが、そばにいました。
ポコちゃんは、はじめて気づきました。
「……あ」
そして、小さく笑いました。
「ぼく、もうひとりじゃない」
森の奥で、
あたらしい“なかま”が、生まれました。
そして――
本当の旅は、ここから始まるのでした。
森の中には 扉がある
扉をポコちゃん開けようとしても、開かない。
扉の下にメモあった。
そのメモには、謎をとく紙があった。
端っこに、サンタさんの絵が書いてあって、
サンタさんからのお手紙だった。
この謎を解くと扉が開くよ。
ーーー4/17ーーー
森の奥で、あたらしい“なかま”が、生まれました。
そして――
本当の旅は、ここから始まるのでした。
そのときです。
サワ……サワ……
大きな木の葉が、これまでよりも少し強くゆれました。
「まだ、つづきがあるよ」
木の声が、静かにひびきました。
「え?」
ひなちゃんが、ふしぎそうに見上げます。
「この森にはね――
“とびら”があるんだ」
「とびら?」
ポコちゃんたちは、顔を見合わせました。
木の根もとが、ゆっくりと光りました。
すると――
ゴゴゴ……
地面が少しだけ動いて、
森の奥に、古くて大きな木のとびらがあらわれました。
とびらは、つるや葉っぱにおおわれていて、
まるでずっとそこにあったみたいでした。
「これが……とびら?」
ポコちゃんは、そっと近づきました。
手をのばして――
ギィ……
押してみました。
でも。
びくともしません。
「開かない……」
ポコちゃんは、少し困った顔をしました。
そのときです。
「ねえ、これ……なに?」
ムーチが、小さな声で言いました。
とびらの下に、
小さな紙がはさまっていました。
ひなちゃんが、それを取り出しました。
紙には、かわいい絵がかいてありました。
赤いぼうし。
白いひげ。
「サンタさんだ!」
ひなちゃんが言いました。
その下に、小さな文字が書かれていました。
――――――――――
「やあ、森のなかまたちへ」
このとびらは、
“ほんとうのなかま”になった子だけが開けるとびらだよ。
そのためには――
なぞをといてね。
なぞがとけたとき、
とびらはひらくよ。
サンタより 🎄
――――――――――
「なぞ……?」
ソラが、少しだけ首をかしげました。
紙のうらを見ると、
そこには、もう一枚の小さな紙がはってありました。
それは――
なぞの紙でした。
ポコちゃんは、ゆっくりと読みました。
「ひとりだと見えないもの。
でも、いっしょだと見えてくるもの。
それは、なあに?」
しずかな空気が流れました。
ムーチが、小さく言いました。
「むずかしい……」
ソラは空を見上げました。
ひなちゃんは、ポコちゃんを見ました。
ポコちゃんは――
少しだけ考えてから、言いました。
「それって……
“なかま”じゃないかな」
その瞬間――
サワァァァ……
森の風が、やさしくふきました。
そして。
ギィィ……
とびらが、ゆっくりと動きはじめました。
「えっ……!」
ひなちゃんが声をあげました。
ポコちゃんたちは、顔を見合わせました。
とびらは、少しずつ、ひらいていきます。
その向こうには――
まだ見たことのない光が、広がっていました。
「行こう」
ポコちゃんが言いました。
もう、迷いはありませんでした。
ひなちゃん、ムーチ、ソラ。
みんなで、一歩ふみだしました。
そして――
新しい世界への、とびらが、完全に開いたのでした。
