寿栄 食の物語(さくらちゃん)

夕暮れどき、寿栄コミュニティセンターのまわりには、どこか懐かしい匂いが漂っていた。焼けた炭の匂いや、遠くで誰かが作る夕飯の湯気の匂い。それは、ふと昔の記憶を呼び起こす。

宮津で過ごしたあの日のことを、私はよく思い出す。家族で囲んだバーベキュー。炭火の上でじゅうじゅうと音を立てる肉に、みんなの笑い声が重なっていた。食べ終わるころには空はすっかり暗くなって、手持ち花火の小さな光が、夜の中でゆらゆらと揺れていた。

「また行きたいね」

誰かがそう言って、みんながうなずいた。その言葉は、あの夏の空気ごと、今も心の中に残っている。

――そして、今。

昨日の夜、揚げたてのとんかつを食べた。サクッとした衣の音が心地よくて、つい笑顔になった。今日の昼は、その残りを使ったカツ丼。甘辛いだしが染み込んだカツに、ふわっとした卵が重なって、どこかほっとする味だった。

特別な料理じゃない。だけど、誰かが作ってくれて、誰かと一緒に食べるだけで、その一皿は少しだけ温かくなる。

この街もきっと、そうやってできてきたのだと思う。大きな出来事じゃなくて、こうした日々の食卓の積み重ねで。家族で囲むごはん、笑いながら食べる一口、何気ない「おいしいね」の一言。

それらが、静かにこの街の土台になっている。

未来のことは、まだはっきりとは見えない。でも、きっとまたどこかで、家族と一緒に食卓を囲むだろう。季節が巡って、違う景色の中でも、同じように笑いながら。

そしてその時も、誰かがきっと言う。

「また、こうして食べたいね」

その一言がある限り、街はこれからもやさしく続いていくのだと思う。

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