夕暮れどき、寿栄コミュニティセンターのまわりには、どこか懐かしい匂いが漂っていた。焼けた炭の匂いや、遠くで誰かが作る夕飯の湯気の匂い。それは、ふと昔の記憶を呼び起こす。
宮津で過ごしたあの日のことを、私はよく思い出す。家族で囲んだバーベキュー。炭火の上でじゅうじゅうと音を立てる肉に、みんなの笑い声が重なっていた。食べ終わるころには空はすっかり暗くなって、手持ち花火の小さな光が、夜の中でゆらゆらと揺れていた。
「また行きたいね」
(さらに…)Spotifyはプロローグです。
夕暮れどき、寿栄コミュニティセンターのまわりには、どこか懐かしい匂いが漂っていた。焼けた炭の匂いや、遠くで誰かが作る夕飯の湯気の匂い。それは、ふと昔の記憶を呼び起こす。
宮津で過ごしたあの日のことを、私はよく思い出す。家族で囲んだバーベキュー。炭火の上でじゅうじゅうと音を立てる肉に、みんなの笑い声が重なっていた。食べ終わるころには空はすっかり暗くなって、手持ち花火の小さな光が、夜の中でゆらゆらと揺れていた。
「また行きたいね」
(さらに…)丘の上に風が通るたび、土と草の匂いがふわりと立ちのぼった。
松江の田舎で育った私は、その匂いと一緒に食卓の記憶を思い出す。
夕方になると、母は畑から戻ってきた。腕には土のついた大根や青菜、籠にはまだぴちぴちと跳ねる魚。台所では味噌の香りが立ち、ことことと煮付けの音がする。
(さらに…)春の終わり、寿栄コミュニティセンターの裏手の道には、やわらかな土の匂いが漂っていた。
朝露をふくんだ草の間から、筍が小さな頭をのぞかせている。
「今年はよう伸びとるなあ」
母はしゃがみ込み、土をそっと掘った。
その手は節くれだっていたけれど、驚くほどやさしかった。
寿栄コミュニティセンターの裏手に、小さな川が流れている。夏になると、風が少しだけ湿り気を帯びて、どこか遠くから炭の匂いがしてくるような気がする。
その匂いをかぐと、私はいつも父のことを思い出す。
父の夏の仕事は、鰻を焼くことだった。七輪に炭を起こし、ぱちぱちと音を立てる火の上で、串に刺した鰻をじっくりと焼く。汗をぬぐう暇もなく、ただひたすらに、火と向き合っていた。
(さらに…)